25年前以上前の中国・上海には、流しのタクシーなどはなく、高級ホテル前に数台集まるだけで白タクもどきばかりでした。それでも運転手は特殊技能者として価値が高く、大切に扱われていました。このようにタクシー業界の成り立ちは日本とは全く違います。
上海タクシー業界の発展
上海に初めて株式会社形式のタクシー会社が設立されたのは1991年でした。当時の上海市長は後に首相となる朱鎔基です。彼は上海のビジネス環境を整えるのに注力し、タクシー業界の‟整頓”もその一環でした。その後上海のタクシー業界は、順調に発展します。
2011年4万5000台、2014年5万1000台という調査数字があります。それでも常に不足気味でした。2010年に第二ターミナルができる前の虹橋空港では、40分~1時間くらいのタクシー待ちは当たり前でした。当然力関係は運転手有利で横柄な者も多く、できればトップ企業の「大衆」の車を選ぶように、などと言われたものです。また2004年以降、バス、地下鉄、タクシー共通の交通カードが普及し始め支払いは各段に便利になり、頻繁に訪れる出張者たちもよく利用しました。
危機に陥ったタクシー業界
こうして4半世紀に渡り好調だった上海のタクシー業界ですが、今その根本が揺らいでいます。
「上海のタクシー」で検索すると、3000台のタクシーが運転手不在、業界の品位が低下、働いても収入は減るばかりという運転手の愚痴、などの記事が出ています。これらの現象の大きな要因の一つとして、配車アプリ「滴滴出行」の影響があげられます。
2012年、北京で産声を上げたこの会社は、たった3年で中国全土を席巻しました。何しろ車、スマホ、銀行口座さえあれば、だれでも職業運転手になれるシステムです。まさにスマホ時代の申し子です。また会社へ上納金を収める必要のない分料金は安く、利用者にも喜ばれています。2015年通年では14億3000万件の利用があり、アメリカのUberを大きく引き離す世界一の配車アプリです。
上海タクシーの変わった点・変わらない点
現在のタクシーの利用上の注意点は1~2年前とは全く異なります。配車アプリ「滴滴出行」の利用が増加した結果、街中にタクシーが増えすぎ、タクシーが捕まらないことは少なくなりました。以前なら万一に備え地下鉄駅近辺のホテルを、と考えましたが今はそこまでする必要はなさそうです。久々の上海出張という方は、かつての経験とズレが出ています。最新の状況を現地に確認しておきましょう。
一方で変わらない光景もあります。飛行機で夜遅く到着という場合、飛行機が遅延したらどうしようと不安になりますが、上海虹橋空港は昔も今も心配ありません。深夜0時、1時となっても第2ターミナルには人の波とタクシーが途切れることはありません。むしろ日中よりタクシー待ち行列は長いくらいです。配車アプリが広まっても、これだけは変わりません。メガシティのダイナミズムを感じる時間です。
さいごに
虹橋空港でタクシーに乗り、近場の行先を告げると運転手は露骨に嫌な顔をします。またこちらの発音が通じない時、びっくりするような大声で聞き返してきます。気の弱い日本人出張者はこれだけで怯えてしまいます。しかし、これは中国における通過儀礼のようなものです。相手も喧嘩を望んでいるわけではありません。気合負けしないようにしましょう。